障害者グループホーム(共同生活援助)の開設と運営をめぐる制度が、2026年から2027年にかけて相次いで変わります。
2026年(令和8年)6月からは、新たに指定を受ける事業所の基本報酬が2.8%引き下げられました。収支差率が高く、事業所が急増しているサービス類型を対象とした措置です。
そして、2027年4月からは、自治体が新規の指定をしないことができる「総量規制」の対象にグループホームが加わります。同じタイミングで実務経験と研修の修了を管理者要件とする方針も、厚生労働省から示されています。
いずれも、主にこれから新しい事業所の開設を検討する事業者に影響を及ぼす変更です。
この記事では、グループホームの経営環境と制度の動きを整理したうえで、事業の選択肢としてのM&A(譲渡・売却)について、譲渡価格の考え方、当社の成約事例、スキームごとの手続きの違いを解説します。
この記事の要点
- 共同生活援助の事業所数は2024年12月時点で14,247事業所と増加が続く。介護サービス包括型の収支差率は6.9%だが、赤字の事業所も約4割ある
- 2026年6月から新規指定の基本報酬が2.8%減に。2027年4月からは総量規制の対象になり、管理者に実務経験と研修を求める方針も示されている
- 株式譲渡は事業所譲渡の指定を引き継ぐため、比較的制度変更の影響を受けにくいスキームである。事業譲渡は新規指定が必要であり、事業所が「実質的に継続」と認められるかで報酬や総量規制での扱いが変わる
障害者グループホーム(共同生活援助)とは?サービスの概要
障害者グループホームは障害のある方が共同生活を送る住居で、障害者総合支援法に基づくサービスの名称は「共同生活援助」です。主に夜間に、食事や入浴等の介護、相談等の日常生活上の支援を行います。
なお、高齢者向けの認知症グループホーム(認知症対応型共同生活介護)とは根拠法や報酬体系が異なる別の事業です。
障害者グループホームの3類型と特徴
障害者グループホーム(以下、グループホーム)は、支援形態や対象者のニーズに応じて3つの類型に分かれています。
- 介護サービス包括型: 主に事業所の世話人や生活支援員が、食事や清掃などの家事援助から入浴・排せつ等の介護サービスまでを一体的に提供する形態です。グループホームの中で最も一般的です。
- 外部サービス利用型: 日常生活の相談や家事などの支援はグループホームの世話人が行い、身体介護等の専門的な介護サービスは外部の居宅介護事業者(ヘルパー)に委託・契約して利用する形態です。
- 日中サービス支援型: 障害の重度化や高齢化に対応するため2018年度に創設された形態です。24時間の支援体制(夜間支援員等の配置)を備え、日中活動の場へ外出することが困難な方に対してもグループホーム内で日中支援を提供する手厚い人員体制が特徴です。
障害者グループホーム(共同生活援助)の市場動向と経営環境
事業所数・利用者数の推移
国保連のデータによると、グループホームの事業所数は2024年12月時点で1万4,247事業所でした。全体的に増加傾向にあり、その中でも近年は営利法人の参入が増えています。

(【画像】 第47回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」資料より)
形態別では、「日中サービス支援型」事業所の伸びが目立ち、「外部サービス利用型」は減少傾向にあります。
(【画像】第47回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」資料より)
障害者グループホーム3類型の比較
| 類型 | サービスの特徴 | 事業所数(2024年12月時点) | 利用者数(2024年12月時点) |
|---|---|---|---|
| 介護サービス包括型 | 事業所の従業者が介護サービスを提供 | 1万1,857事業所 | 16万7,004人 |
| 外部サービス利用型 | 外部の居宅介護事業所に委託 | 1,148事業所 | 1万4,105人 |
| 日中サービス支援型 | 事業所の従業者により常時の介護サービスを提供 | 1,242事業所 | 1万8,441人 |
収支差率と赤字事業所の割合
厚生労働省の調査によると2024年度決算の収支差率は、介護サービス包括型が6.9%、日中サービス支援型が5.1%でした。これに対し、調査の対象となった障害福祉全サービスの加重平均は6.5%です。
| 類型 | 収支差率(2023年度決算) | 収支差率(2024年度決算) | 収入に対する給与費の割合(2024年度決算) | 赤字の事業所の割合(2024年度決算) |
|---|---|---|---|---|
| 介護サービス包括型 | 5.0% | 6.9% | 61.7% | 39.0% |
| 日中サービス支援型 | 6.8% | 5.1% | 66.1% | 42.8% |
| 外部サービス利用型 | 1.4% | 2.4% | 57.0% | 45.6% |
※出典:障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 第48回 資料4「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果の概要」。収支差率は物価高騰対策関連補助金を含まない値
経営の状況は2極化しており、「介護サービス包括型」の39.0%、「日中サービス支援型」の42.8%は赤字でした。
障害者グループホームに対する規制強化の動き
2026年以降、グループホームの開設や運営に深く関係する制度変更や規制の強化が進められています。

2026年(令和8年)6月の臨時報酬改定:新規指定事業所の基本報酬が減額に
2026年6月、通常の3年周期を待たずに障害福祉サービス等報酬改定が臨時で行われました。
この改定によって 「収支差率が高く、かつ、事業所が急増しているサービス類型」 の新規指定事業所の基本報酬が一時的に引き下げられています。
グループホームも引き下げの対象であり、 「介護サービス包括型」と「日中サービス支援型」の基本報酬が2.8%減額されています。

(【画像】「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」)
これは2027年度の報酬改定までの臨時応急的な措置で、既存事業所は従来通りの基本報酬が算定できます。就労継続支援B型、児童発達支援、放課後等デイサービスにも同じ措置が設けられましたが、減額の幅はグループホームが最も大きくなっています。
なお、 事業譲渡や吸収合併の前後で事業所が実質的に継続して運営されると指定権者が認め、指定手続きの簡素化や報酬上の実績の通算を行った場合は、基本報酬の減額の「対象外」とされています 。
2027年(令和9年)4月からの管理者の資格要件導入
厚労省は、 2027年4月から管理者に資格要件を設ける方針を示しています 。

(【画像】第156回社会保障審議会障害者部会の厚労省資料より)
2026年6月時点で、指定基準に新たに管理者の要件を設け、次の2つを求める案が示されました。
- 障害福祉サービス事業所などで3年以上、障害者の支援に従事した経験があること
- 都道府県が実施する「共同生活援助管理者研修(仮称)」を修了していること
研修の修了は2027年4月から直ちに求めるのではなく、2027〜2029年度の3年度の間に修了すればよいとされています。この点は、既存のグループホームの管理者にも、2027年度以降に新しく開設するグループホームの管理者にも共通します。
実務経験の要件には、開設時期によって扱いが分かれる案が示されています。
- 2026年度までに開設したグループホームで、施行時点で勤務している管理者には、3年の実務経験を求めない
- 2027年度以降に新しく開設するグループホームは経過措置がなく、開設時から3年以上の実務経験がある管理者が必要
2027年4月からの総量規制の対象に
2027年4月から、グループホームは自治体による総量規制の対象に加わります。
総量規制は、サービス等の供給が地域のニーズに対して過剰にならないよう、自治体の裁量で事業所の指定をしないことができるようになる仕組みです。
2026年に策定されたガイドラインは、総量規制を実施する場合でも、強度行動障害や医療的ケアが必要な人など、地域で不足している個別ニーズ等に対して例外規定を定めるよう促しています。
*関連記事:【2026年最新】介護・障害福祉サービスの「総量規制」とは?対象サービス・M&Aで参入する選択肢を徹底解説
障害者グループホームの譲渡・売却相場と価格を左右する要素
障害者グループホームへの参入規制が強まることで、事業の多角化や大規模化を模索する法人にとってM&Aの重要性が増しています。
ここからは障害者グループホームの譲渡価格について整理します。
譲渡価格の考え方
中小規模の介護・障害福祉事業の売却価格は、「時価純資産プラス営業権法」(年倍法)で考えるのが一般的です。資産と負債を時価で評価した純資産に、営業権(のれん代)を足したもので、営業権は実質的な営業利益の2〜3年分が目安になります。
算定の詳しい手順は、【2026年最新】介護事業のM&Aの相場と売却価格の計算式、高値がつく条件を解説で解説しています。
譲渡価格を左右する要素
営業権を算定する土台となるのは「実質的な営業利益」です。
グループホームのM&Aでは、利益を生み続けることができる事業所であるかどうかを見定めるために、以下のような要素がチェックされます。
- 入居率と利用者の障害支援区分 : 共同生活援助の基本報酬は、利用者の障害支援区分などに応じて設定されています。入居率と利用者の区分の構成次第で収入が変わります。
- 加算の算定状況と根拠書類 : 加算の算定要件を満たしていることを書類で示せるかどうかです。運営指導で指摘を受けた事項があれば、改善の記録も確認事項となります。
- 管理者・サービス管理責任者の雇用継続 : 管理者やサービス管理責任者が譲渡後も継続して働けるかどうかです。人員基準を満たせなくなる場合、譲受側企業による採用活動が必要になります。
- 建物の契約条件 : 賃貸物件なら家賃と契約期間、オーナーが譲渡後も貸し続けるかどうかが、利益の算出や事業の継続性の前提になります
- 借入の扱い : 福祉医療機構などからの借入を譲受企業が引き継ぐことができるかどうかで、譲渡価格や支払いの組み立てが変わることがあります。借入の引き継ぎができないと分かれば、価格交渉が必要になることもあります。
障害者グループホームのM&A成約事例―当社の支援実績より
当社が支援した障害者グループホームの譲渡事例を一部紹介します。
| 譲渡対象 | エリア | 売上/利益 | 譲受企業 | スキーム | 譲渡価格 |
|---|---|---|---|---|---|
| グループホーム2拠点(開業から約半年) | 関東エリア | 約5,000万円/800万円 | 医療関連の業務請負と障害福祉サービスを行う法人 | 事業譲渡 | 4,500万円 |
| グループホーム3棟 | 中国エリア | 月約500万円/赤字(実質的な営業利益は約800万円) | 訪問看護の法人(障害福祉は初参入) | 事業譲渡 | 2,200万円 |
1件目は、開業から約半年で譲渡のご相談をいただいた事例です。
譲渡企業は障害児向けのサービスに経営資源を集中させるため、グループホームの譲渡を選択しました。
2件目は、代表者がサービス管理責任者を兼ねていた事例です。譲受企業側にサービス管理責任者となる人材がいなかったため、譲渡後もしばらく代表者が残ることを条件に成約に至りました。
M&Aのスキームと手続きの違い
障害福祉事業のM&Aでよく使われるスキームは、株式譲渡と事業譲渡です。
株式譲渡は譲渡企業の株式を譲り渡して法人ごと引き継ぐ方法、事業譲渡はグループホームの事業だけを切り出して引き継ぐ方法です。
グループホームではどちらを選ぶかで、事業所指定の扱いや、建物の賃貸借契約の扱いが変わります。また、2026年度の臨時措置による基本報酬の考え方や総量規制の影響も事業譲渡の場合は特によく確認する必要があります。
| 項目 | 株式譲渡 | 事業譲渡 |
|---|---|---|
| 指定 | 法人が変わらないため、指定は続く。代表者・役員などの変更を届け出る | 譲受企業の事業所として新規の指定が必要 |
| 2027年4月からの総量規制 | 影響を受けない(新規指定ではない) | 規制を実施する地域では、新規指定にあたるため影響を受けうる。事業継承を例外とする運用例が示されている |
| 建物の賃貸借契約 | 契約の当事者(法人)は変わらない。ただし契約に経営者の交代に関する条項がないか確認する | 譲受企業が契約を引き継ぐには、オーナーの承諾や契約の結び直しが必要 |
| 債務・過去のリスク | 法人ごと引き継ぐため、簿外債務や過去の報酬請求の誤りなども引き継ぐ | 引き継ぐ資産・負債・契約を個別に決められる |
※出典:社会保障審議会障害者部会 第145回 資料2「障害福祉分野における手続負担の軽減について」、「障害福祉サービス事業者等の指定のガイドライン」をもとに作成
M&Aの流れとスケジュール
グループホームのM&Aは、一般的に次の流れで進みます。
- 専門家への相談、譲渡の条件の整理
- 譲受企業の探索、トップ面談
- 基本合意
- デューデリジェンス
- 最終契約の締結
- 指定の手続、利用者・職員への説明、引き継ぎ
検討を始めてから譲渡が完了するまでには、半年〜1年程度かかります。
事業譲渡では、譲受企業が新規の指定を受ける必要があるため、指定権者の手続きの締切から逆算してスケジュールを組みます。指定ガイドラインが示す新規指定を参考にすると、指定の3〜5カ月前に事前相談の受付、2カ月前に申請書類の審査、1カ月前に現地審査がという流れが例として示されています。
2027年4月以降に総量規制を実施する地域では、事業譲渡での新規指定が例外として認められるかどうかも、確認する必要があります。譲渡を検討している場合、規制の導入前後で手続きがどのように変わるかを、指定権者に早めに確認しておくことをおすすめします。
いずれにせよ、「M&Aを実施すると決めてから相談する」のではなく、「検討を始めた段階で専門機関に相談する」ことで、選択肢は確実に広がります。
*関連記事:障害福祉のM&A仲介会社の選び方
よくある質問
障害者グループホームのM&Aの相場はいくらですか?
売却価格は、時価純資産に営業権(のれん代)を足した「時価純資産プラス営業権法」で考えるのが一般的で、営業権は実質的な営業利益の2〜3年分が目安です。入居率、利用者の障害支援区分、加算の算定状況、スタッフの雇用が継続するかどうか、建物の契約条件によって、同じ規模でも価格は大きく変わります。
赤字の障害者グループホームでも売却できますか?
赤字でも譲渡の事例はあります。当社が支援した事例にも、赤字のグループホームを含む事業の譲渡で成約したケースがあります。譲受企業は、入居率の改善や運営の効率化で収益を改善できるかを見て判断するため、赤字の理由を説明できるように整理しておくことが大切です。
障害者グループホームの総量規制はいつから始まりますか?
2027年(令和9年)4月1日からです。ただし、総量規制を実施するかどうかは都道府県・指定都市・中核市の判断で、すべての地域で新規開設が止まるわけではありません。すでに指定を受けている事業所の運営には影響しませんが、規制を実施する地域では定員を増やすことが難しくなります。
障害者グループホームは儲かるのですか?
2024年度決算の収支差率は、介護サービス包括型が6.9%、日中サービス支援型が5.1%でした(「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果の概要」)。一方で、介護サービス包括型の39.0%、日中サービス支援型の42.8%は赤字で、事業所によって差があります。
株式譲渡と事業譲渡、どちらを選べばよいですか?
株式譲渡は法人ごと引き継ぐため、指定を取り直す必要がなく、新規指定事業所を対象とした報酬引き下げや総量規制の影響を受けません。事業譲渡は引き継ぐ事業や資産の範囲を選べる一方、新規の指定が必要で、「実質的に継続」と認められるかによって報酬単価や総量規制での扱いが変わります。法人がほかの事業も運営しているか、借入や建物の契約をどうするかによって、適したスキームは変わります。
まとめ
- 共同生活援助の事業所数は2024年12月時点で1万4,247事業所と増え続けており、2026年6月からは新規指定の基本報酬が2.8%減に、2027年4月からは総量規制の対象になる。いずれも新規開設側の条件を変える制度
- 株式譲渡なら指定は続き、制度変更の影響を受けない。事業譲渡では、事業所が「実質的に継続して運営される」と指定権者に認められるかが、報酬単価や総量規制での扱いを左右する
- 売却価格は、入居率と利用者の区分、加算、管理者・サービス管理責任者の継続、建物の契約条件で変わる。譲渡を考え始めた段階で、これらを整理しておくことが交渉の出発点になる
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