Glossary

用語集

介護事業の売却・買収を検討する上で、知っておくべき重要な専門用語をまとめました。
一般的な意味だけでなく、「介護・福祉業界ならではの注意点やポイント」も交えてわかりやすく解説しています。

  • EBITDA
  • EBのサジェストが入ります

五十音で探す

あ行

アドバイザリー契約

FA契約

M&A仲介会社に「私の会社の相手探しをお願いします」と正式に依頼する契約

M&Aの専門家(仲介会社やFA)に対し、相手企業の探索、交渉のサポート、資料作成などの業務を委託する契約です。業務範囲や手数料(着手金や成功報酬)の体系が記載されます。

介護業界でのポイント
契約形態には「専任(1社だけに依頼)」と「非専任(複数社に依頼)」があります。 介護・福祉業界のM&Aは情報戦のため、「介護業界に特化した強みを持つ1社」に専任で依頼するのが一般的です。一般業種向けの仲介会社に依頼しても、許認可の引き継ぎや加算の知識がなく、話が進まない(または破談になる)ケースが多いためです。

意向表明書

いこうひょうめいしょ

「あなたの会社に興味があります」と買い手が示す、基本合意書の前段階に位置する非公式な意思表示の文書

トップ面談などを経て、買い手が売り手に対して「買収を前向きに検討したい」という意向を示す文書です。希望価格の概算や今後の進め方についての考えが記載されますが、法的拘束力はほぼなく、あくまで「本格的に話を進めませんか」という申し出の書面です。

介護業界でのポイント
意向表明書は複数の買い手候補から同時に受け取ることができるため「どの買い手が最も条件が良く、信頼できるか」を比較検討する絶好の機会です。価格だけでなく「引き渡し後の雇用維持方針」「介護事業への理解度」なども合わせて評価することで、後悔のない選択につながります。ここでの判断が、独占交渉権締結後の行方を大きく左右します。

EBITDA

いーびっとでぃーえー/償却前営業利益

「その事業が本業でどれだけ現金を稼ぐ力があるか」を示す指標。企業の売却価格を決める重要な基準

Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortizationの略。 計算式は一般的に「営業利益 + 減価償却費」(有形固定資産の減価償却費「D」と無形資産の償却費「A」の合計)で算出されます。国ごとの金利や税率の影響、設備投資による減価償却の影響を排除して、企業の実質的な収益力を測るために使われます。

介護業界でのポイント
中小規模の介護事業所では、節税のためにオーナーの役員報酬を高めに設定していたり、私用車を経費計上していたりして、決算書上の「営業利益」が低く(あるいは赤字に)見えているケースが多々あります。 M&Aの評価では、こうした経費を利益に足し戻した「実質的なEBITDA(修正EBITDA)」を用いて評価します。そのため、「決算書が赤字だから売れない」とは限らず、この数値次第で十分に高い評価がつく可能性があります。

運転資金

うんてんしきん/ワーキングキャピタル

事業を日々回すために必要な手元現金。M&A後に買い手が追加投入が必要かどうかを見極める指標

事業を継続するために必要な短期的な資金のことです。一般的に「流動資産 ー 流動負債」で計算されます。売掛金の回収と仕入・人件費の支払いタイミングのズレを埋めるために必要な資金です。

介護業界でのポイント
介護報酬は「サービス提供の約2ヶ月後」に入金される仕組みのため、事業規模が大きいほど一定の運転資金が必要になります。M&A直後に買い手が一時的に資金を立て替えるケースもあるため、「クロージング時にどれだけの現預金を引き継ぐか」を最終契約書に明記することがトラブル防止の鉄則です。

アーンアウト条項

アーンアウトじょうこう/業績連動対価

「M&A後の業績が目標を達成したら、追加でお金を払います」という条件付きの対価設計

M&Aの対価の一部を、成約後の業績目標(売上や利益の達成など)に連動させる条項です。売り手は「成果を出せばさらに受け取れる」、買い手は「期待外れなら支払いを減らせる」というリスク分散の仕組みです。

介護業界でのポイント
売り手と買い手の間で価格の折り合いがつかない場合に、この条項で妥協点を見つけるケースがあります。例えば「引き渡し後1年間、稼働率90%以上を維持できたら追加で○百万円」という形です。ただし売り手(前オーナー)が経営から離れた後に指標をコントロールできるのかという問題があり、指標の設定と計測方法を契約書に明確に記載する必要があります。

インフォメーションメモランダム

企業概要書/IM

NDA締結後に買い手へ渡す「詳細な会社案内書」。事業の強みと課題のすべてがここに詰まっている

秘密保持契約(NDA)を結んだ買い手候補に対して提示する詳細な資料です。会社概要・財務情報・事業内容・人員体制・許認可の状況などが網羅されています。ノンネームシートが「求人票」だとすれば、IMは「詳細な募集要項」にあたります。

介護業界でのポイント
買い手が特に注目するのは「加算の取得状況」「稼働率の直近3年間の推移」「スタッフの勤続年数と保有資格」です。これらが整理されていればいるほど買い手の信頼感が高まり価格交渉で有利に働きます。逆に資料が雑然としていると「管理能力に問題がある事業所」と判断されるリスクもあるため、仲介会社と一緒に丁寧に作成することが重要です。

運営指導

旧:実地指導

行政(都道府県や市区町村)が事業所に立ち入り、適切な運営ができているかチェックすること

指定権者が定期的に行う指導監査のことです(2022年度より名称変更)。人員基準や運営基準が守られているか、介護報酬の請求に誤りがないかを確認されます。不正や過誤が見つかれば、報酬の返還を命じられます。

介護業界でのポイント
買い手が最も恐れる「隠れリスク」の一つが、過去の運営指導に起因する「介護報酬の返還命令」です。 M&A後に、「実は過去の記録に不備があり、3年分の加算を返還しなさい」と行政から命令された場合、その支払いは(契約によりますが)新しいオーナーに降りかかる可能性があります。そのため、デューデリジェンスでは過去の指導履歴や是正状況が徹底的に調査されます。

か行

クロージング

契約書にハンコを押した後、実際にお金の決済を行い、経営権が正式に移る「実行日」のこと

最終契約(Signing)の後、数週間〜数ヶ月後に行われる決済手続きです。買い手からの入金(着金)確認、株券や会社実印の引き渡し、役員の変更登記申請などを同日に行い、M&A取引が完了します。

介護業界でのポイント
「事業譲渡」スキームの場合、このクロージング日は行政手続きと密接に関わります。 新規指定申請の許可日が通常「毎月1日」であるため、クロージングもそれに合わせて「前月の末日」や「当月の1日」に設定されることが一般的です。また、この日までに利用者さん全員分の「契約同意書」を取り直す必要があるため、現場のスケジュール管理が非常にシビアになります。

キャッシュフロー

CF/資金の流れ

会社に「入ってくるお金」と「出ていくお金」の差額。利益とは異なる、事業の実際の体力を示す指標

一定期間における現金の流入と流出の差額のことです。損益計算書上の「利益」とは異なり、減価償却費などの影響を除いた実際の現金の動きを示します。「営業CF」「投資CF」「財務CF」の3つに分類されます。

介護業界でのポイント
決算書上は「黒字」でも、キャッシュフローが継続的にマイナスな事業所は資金繰りに問題を抱えている可能性があります。買い手はM&Aの審査で「フリーキャッシュフロー(事業が自由に使えるお金)」を重視します。介護事業では設備投資(車両・備品など)が定期的に発生するため、EBITDAが高くても設備維持コストでキャッシュが減っているケースがあります。

基本合意書

LOI / MOU

最終契約の前に、「前向きに買収します」という意向と、「大まかな条件(価格やスケジュール)」を握る仮契約

Letter of Intent(意向表明書)の略。 トップ面談などを経て、買い手が買収への強い関心を示した段階で締結されます。売買価格の目安やスケジュールが記載されますが、法的拘束力を持たない部分(買収義務など)と、持つ部分(秘密保持や独占交渉権など)が混在しています。

介護業界でのポイント
売り手にとって最も重要な判断ポイントは、ここに盛り込まれる「独占交渉権」です。 これを結ぶと、通常1〜3ヶ月間は他の買い手候補と交渉ができなくなります。「もっと高く買ってくれる人が後から現れるかもしれない」というチャンスを捨てることになるため、この段階で「本当にこの相手(買い手)に任せてよいか」を慎重に見極める必要があります。

介護職員等処遇改善加算(統合加算)

かいごしょくいんとうしょぐうかいぜんかさん/とうごうかさん

2024年の介護報酬改定で3つの処遇改善加算が一本化された、介護職員の賃上げのための加算

2024年(令和6年)6月の介護報酬改定により「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」の3つが統合された加算です。加算区分はI〜IVに整理され、キャリアパス要件の充足度などによって算定できる区分が決まります。

介護業界でのポイント
2024年の統合により加算体系が変わったため、売り手と買い手で「旧制度ベースの理解」と「新制度ベースの理解」がズレているケースが生じています。M&Aの評価や統合後の給与設計においては現行の統合加算の区分と取得要件を正確に確認した上でシミュレーションすることが重要です。また取得区分が変わると職員の手取りに影響が出るため、PMI計画の中で早期に給与体系の統合方針を決定することが求められます。

介護報酬改定

かいごほうしゅうかいてい

3年に1度、国が決める「サービスの公定価格」の変更。M&Aのタイミングを左右するビッグイベント

社会情勢や事業者の経営実態に合わせて、介護サービスの単価(単位数)や算定要件を見直すことです。原則3年に1度行われます(障害福祉は別タイミング)。

介護業界でのポイント
M&Aの売却価格は「将来の収益」をベースに決まるため、改定の時期が近づくと買い手が慎重になり、交渉が停滞することがあります。 逆に、「改定で厳しくなる前に売ってしまいたい(売り逃げ)」や「新しい加算を取れる体制にして価値を上げてから売る」など、改定のサイクルを見極めて売却時期を選定することが、賢い出口戦略となります。

介護老人保健施設

かいごろうじんほけんしせつ/ろうけん

病院退院後の高齢者が在宅復帰を目指してリハビリを行う中間施設。医療法人の運営が多くM&Aに独自の制約がある

病院から退院した要介護者が在宅生活への復帰を目指してリハビリを受ける施設です。医師の常駐が義務付けられており医療的ケアを伴うリハビリを提供します。設置主体として医療法人が多くを占めます。

介護業界でのポイント
老健を運営する医療法人は社会福祉法人と同様に通常の株式譲渡によるM&Aができません。出資持分のある医療法人の場合は「持分の譲渡」が可能ですが、出資持分のない医療法人は理事の入れ替えによる実質的な経営権移転となります。いずれも高度な専門知識が必要であり医療法人M&Aの専門家の関与が不可欠です。

会社分割

かいしゃぶんかつ

会社の一部の事業を別の会社(または新しく作った会社)に切り出して移転する組織再編の手法

会社の事業の全部または一部を、他の会社(吸収分割)または新設した会社(新設分割)に承継させる組織再編行為です。事業譲渡と似ていますが、会社法上の手続きを使うため権利義務が包括的に移転する(個別の同意なしに契約を引き継げる)点が異なります。

介護業界でのポイント
複数のサービス種別を運営する法人が特定の事業部門だけをM&Aしたい場合に使われます。対象事業を新設法人に切り出してから株式を譲渡するという「会社分割+株式譲渡」の組み合わせが近年増えています。ただし手続きが複雑で時間もかかるため、専門家への相談が不可欠です。

稼働率

かどうりつ

定員に対して実際に何人使っているかの割合。事業所の収益力と価値を直接決める最重要指標

事業所の定員(または計画利用者数)に対して、実際のサービス利用者数の割合のことです。例えば定員20名のデイサービスで平均17名が利用していれば稼働率は85%となります。

介護業界でのポイント
稼働率は「のれん代」の計算に直結する最重要指標です。稼働率が高い(85〜95%)事業所は収益が安定しているとみなされ高い評価を受けます。逆に稼働率が低い(60%以下)と収益性・将来性に疑問符がつき値下げ交渉の根拠とされます。売却を検討しているオーナーは、M&A活動を始める1〜2年前から稼働率の向上に注力することが売却価格の最大化に直結します。

株式価値

かぶしきかち/エクイティバリュー

売り手(株主)が実際に手にする金額の基準。企業価値から有利子負債を差し引いたもの

企業価値(EV)から有利子負債(銀行借入など)を差し引き、現預金を加えた値です。株主に帰属する価値であり、株式譲渡の場合はこの金額が売却価格(譲渡対価)の基準となります。

介護業界でのポイント
「1億円で売れる」と聞いていたのに実際の手取りが想定より少なかった、というトラブルの原因になりやすいのがこの概念の誤解です。銀行借入が5,000万円ある場合、企業価値1億円でも株式価値は約5,000万円(プラス現預金)になります。M&A前に借入を返済してEVと株式価値の差を小さくするか、借入ごと引き渡すかを戦略的に検討することが重要です。

株式譲渡

かぶしきじょうと

会社のオーナー権(株式)をそのまま買い手に渡し、会社を丸ごと引き継いでもらう最も一般的なM&A手法

売り手(株主)が保有する株式を買い手に譲渡し、対価として現金を受け取る手法です。会社という「箱」ごとの移動になるため、従業員の雇用契約や取引先との契約関係は、原則としてそのまま引き継がれます。

介護業界でのポイント
介護事業者にとっての最大のメリットは、「許認可の手続きが簡便であること」です。 「事業譲渡」では許認可の取り直しが必要ですが、「株式譲渡」であれば、代表者の変更届などの「事後の届出」で済むケースがほとんどです(※自治体により異なるため確認は必要)。そのため、行政手続きによる空白期間を生まずにスムーズに経営を引き継ぐことができます。

株主名簿

かぶぬしめいぼ

「誰がいくつ株を持っているか」を記録した会社の公式リスト。株式譲渡では必ず確認と書換えが必要

株式会社が作成・保管する、株主の氏名・住所・保有株式数などを記録した帳簿です。株式譲渡が成立した後、買い手への名義書換(株主名簿の記載変更)が必要であり、この書換えが完了して初めて買い手が正式な株主となります。

介護業界でのポイント
中小の介護事業法人では株主名簿が整備されていなかったり実態と記載が一致していないケースがあります(例:離婚した元配偶者や亡くなった親族が株主として残っているなど)。デューデリジェンスでは株主名簿と法人登記の照合が必ず行われるため、売り手は事前に株主構成を整理・確認しておくことが重要です。

企業価値

きぎょうかち/エンタープライズバリュー

「この会社全体を取得するといくらかかるか」を示す、M&Aの基準となる総合的な価値指標

Enterprise Value(エンタープライズ・バリュー)の略。会社の事業全体の価値を表します。計算式は「株式価値 + 有利子負債 ー 現預金」が一般的です。株主だけでなく債権者(銀行など)も含めた「会社全体の価値」を示す指標です。

介護業界でのポイント
介護事業所のM&Aでは企業価値をまず算出し、そこから銀行借入などの有利子負債を差し引いた「株式価値(売り手が実際に受け取る金額)」が最終的な譲渡対価となります。借入が多い事業所は企業価値が高くても手取り額が想定より少なくなるため、財務状況の整理がM&A前の重要な準備事項となります。

競業避止義務

きょうぎょうひしぎむ

会社を売った後、近くで同じビジネス(ライバル店)を始めないという約束

M&Aで事業を売却した売り手(譲渡人)が、その後一定期間、同一または隣接する地域で、同じ事業を行ってはならないという義務です。会社法でも規定されていますが、契約書でより具体的に(例:同一都道府県内で3〜5年間など)定めることが一般的です。

介護業界でのポイント
地域密着型の介護ビジネスにおいて、この条項は極めて重要です。 もし売却直後に、元のオーナーがすぐ近くで新しいデイサービスを始めてしまうと、「昔からの利用者さんやスタッフが、元オーナーの新店舗に流出してしまう」リスクがあります。買い手はこれを防ぐため、かなり厳しい制限(エリアや期間)を求めてくる傾向があります。

居宅介護支援事業所

きょたくかいごしえんじぎょうしょ/ケアマネ事業所

ケアマネジャーが働く事業所。単体では収益性が低いが、他サービスとの連携で強力な集客機能を持つ

ケアマネジャーが配置され、居宅の要介護・要支援者のケアプラン作成やサービス調整を行う事業所です。介護報酬は「居宅介護支援費」として支払われますが、単価が低くスタッフの人件費を考えると単体での収益性は低いことが多いです。

介護業界でのポイント
ケアマネ事業所を単独でM&Aするケースは少なく、デイサービスや訪問介護などを運営する法人が「自社サービスへの利用者紹介ルートの確保」を目的として買収するケースが多いです。ただし利用者に対して公正中立なケアプランを作成する義務があり「系列事業所への誘導」には規制上の制約があります。この点を踏まえた上で評価する必要があります。

減算

げんざん/報酬減算

人員基準や運営基準を違反している事業所に課される「報酬カット」のペナルティ。M&A価値を大きく下げる要因

介護報酬の算定において、人員配置基準や運営基準を満たしていない場合に本来の報酬単価から一定割合が差し引かれる仕組みです。例えば人員基準を満たさない「人員欠如減算」では報酬が30%減算されるケースもあります。

介護業界でのポイント
デューデリジェンスで過去の減算履歴が発覚した場合、買い手は「管理が杜撰な事業所」と判断し価格の大幅な引き下げや案件中止の判断を下すことがあります。特に「人員欠如減算」が継続している事業所は、M&A直後に人員が揃わなくなるリスクを買い手が強く懸念します。減算状態にある場合はまず正常化(基準を満たす状態に戻す)してからM&Aに臨むことが理想です。

国民健康保険団体連合会

こくほれん/国保連

介護報酬の請求を受け付けて審査・支払いを行う都道府県の公的団体。事業所にとっての「給与支払い元」

都道府県ごとに設置されている公的団体です。介護事業所から毎月10日までに送られてくるレセプト(請求データ)を審査し、問題がなければ翌月25日前後に介護報酬を支払います。

介護業界でのポイント
国保連からの入金サイクル(サービス提供月の約2ヶ月後)は、介護事業のキャッシュフローを理解する上で最重要の知識です。M&Aのクロージング前後にまたがる入金分(引き渡し前のサービス分の報酬が引き渡し後に入金される)の帰属をどう処理するかは、最終契約書で明確に定めておく必要があります。

グループホーム

にんちしょうたいおうがたきょうどうせいかつかいご

認知症の方が少人数(5〜9人)で共同生活する施設。地域密着型のためM&Aには市区町村の関与が必要

認知症の要介護高齢者が共同生活住居(ユニット)で日常生活を送りながら介護を受けるサービスです。1ユニット5〜9人の小規模な共同生活が基本で、地域密着型サービスに分類されます。

介護業界でのポイント
グループホームは地域密着型のため指定権者は市区町村です。オーナー変更の際には市区町村への届出または認可が必要になるケースがあります。また1ユニットあたりの定員が少なく(最大9人)、1人の入居者の退去が稼働率に直結するため、M&A後も安定した入居者確保が経営の要となります。地域での口コミ・評判が稼働率を左右するため、前オーナーからの丁寧な引き継ぎが特に重要です。

ケアマネジャー

ケアマネ/かいごしえんせんもんいん

利用者のケアプランを作り、介護事業所へ利用者を橋渡しする「要」。のれん代の源泉であり、M&Aの安定性を左右する存在

介護保険の要介護・要支援認定を受けた方が適切なサービスを受けられるよう、ケアプラン(介護サービス計画書)を作成し、各事業所との連絡・調整を行う専門職です。居宅介護支援事業所に所属するか、施設に配置されています。

介護業界でのポイント
ケアマネジャーとの良好な関係は、デイサービスや訪問介護などの事業所にとって最大の利用者獲得チャネルです。「特定のケアマネさんから紹介が多い」という関係は売却後も継続されるかどうかが不確かなため、M&A後の引き継ぎ期間中に買い手とケアマネの関係構築を意識的に行うことが稼働率維持に直結します。

経営者保証

個人保証

会社が銀行からお金を借りる際、社長個人が連帯保証人になっていること。M&Aでこれを外すことができる

中小企業が融資を受ける際、経営者個人が返済を保証する慣行のことです。会社が倒産した場合、経営者個人が私財を投じて返済しなければならず、経営者にとって大きな精神的重圧(および事業承継の足かせ)となります。

介護業界でのポイント
介護事業者のM&A(株式譲渡)における最大のメリットの一つが、この「個人保証からの解放」です。 買い手が返済能力のある企業であれば、M&Aと同時に銀行交渉を行い、前オーナーの個人保証を解除(または買い手企業へ差し替え)することができます。これにより、売却後のセカンドライフを借金リスクなしで安心して送れるようになります。

さ行

最終契約書

DA

M&Aの全ての条件を確定させ、法的拘束力を持たせた「本契約書」。これにハンコを押すと後戻りできない

Definitive Agreementの略。 基本合意書やデューデリジェンス(調査)の結果を踏まえ、最終的な譲渡価格、従業員の処遇、表明保証、補償条項などを詳細に定めた契約書です。

介護業界でのポイント
特に揉めやすいのが「未経過分の介護報酬の扱い」と「引当金の精算」です。 M&A実行日(クロージング)の前後にまたがって入金される介護報酬(2ヶ月遅れで入るお金)を、売り手と買い手どちらのものにするか。また、賞与や退職金の引当金を価格にどう反映させるか。これらを曖昧にせず、DAに明記しておくことがトラブル防止の鉄則です。

スキーム

M&Aスキーム

M&Aを「どんなやり方(手法)」で実現するか、という枠組みのこと

株式譲渡、事業譲渡、会社分割、合併など、M&Aを実行するための具体的な手法の総称です。税金、手続きの手間、リスクの遮断などの観点から最適なものを選びます。

介護業界でのポイント
中小規模の介護M&Aでは、ほぼ「株式譲渡」か「事業譲渡」の二択になります。 「法人ごと売りたい(許認可手続きを楽にしたい)」なら株式譲渡、「不採算事業だけ切り離したい」なら事業譲渡が選ばれます。最近では、複数の施設を持っている法人が、特定の施設だけを切り出して別会社化し、その会社の株式を譲渡する「会社分割 + 株式譲渡」という応用スキームも増えています。

指定申請

していしんせい/許認可承継

介護事業を行うために都道府県や市区町村から「指定(許可)」をもらう手続き。M&Aの成否を分ける重要ポイント

介護保険法や障害者総合支援法に基づき、事業者がサービスを提供して報酬を得るために必要な行政上の手続きです。法人格ごとに付与されます。

介護業界でのポイント
「事業譲渡」でM&Aを行う場合、指定(許認可)は自動的に引き継げません。売り手がいったん「廃止届」を出し、買い手が新たに「指定申請」を行う必要があります。 この切り替えには通常1〜3ヶ月程度(自治体・サービス種別によって異なります)の審査期間がかかるため、手続きのタイミングを誤ると「サービスは提供しているのに介護報酬を請求できない空白期間」が発生してしまいます。これを防ぐための綿密なスケジュール調整が、仲介会社の腕の見せ所となります。

社会福祉法人

しゃかいふくしほうじん

公共性が高い「非営利法人」。株式会社とは全く違うルールでM&A(経営権の移行)が行われる

社会福祉事業を行うことを目的として設立される法人。税制優遇がある一方で、行政の監督が厳しく、利益の分配(配当)が禁止されています。

介護業界でのポイント
社会福祉法人には「株式」が存在しないため、「株式譲渡」はできません。 その代わり、「理事長や理事などの役員を、買い手側の人間に入れ替える」という方法で、実質的な経営権(支配権)を移行します。行政の認可が必要になるケースもあり、株式会社のM&Aよりも手続きの難易度と専門性が格段に高くなります。

修正純資産法

しゅうせいじゅんしさんほう

決算書の数字をうのみにせず、「今すぐ換金したらいくらになるか」で資産を再計算する方法

コストアプローチ(ネットアセット・アプローチ)の一つ。帳簿上の資産・負債を時価(現在の価値)に修正して、企業価値(株価)を算出します。不動産の含み益や、回収不能な売掛金などを調整します。

介護業界でのポイント
介護事業所の場合、建物や送迎車の価値だけでなく、「回収の見込みがない利用料(滞留債権)」の評価がポイントになります。 長期間未払いの利用者負担分などは、資産として認められずマイナス修正されることが一般的です。逆に、加入している「倒産防止共済」の解約返戻金などはプラスの資産として評価されます。

就労継続支援

しゅうろうけいぞくしえん/A型・B型

障害のある方が企業での就労が難しい場合に就労機会を提供するサービス。A型とB型で経営の仕組みと収益構造が大きく異なる

一般就労が困難な障害者に就労機会を提供するサービスです。「A型(雇用型)」は利用者と雇用契約を結び最低賃金を保証し、「B型(非雇用型)」は雇用契約なしで工賃を支払います。いずれも障害者総合支援法に基づきます。

介護業界でのポイント
A型は利用者に最低賃金の支払い義務があります。障害福祉サービス報酬だけでは賄えないケースが多く、自主事業(製造・農業・カフェ等)の収益で補う事業所が多いですが、自主事業の収益性が低い場合は慢性的な赤字になるリスクがあります。M&Aでは自主事業の収益性と持続可能性を慎重に評価することが重要です。B型は賃金リスクがない分収益構造が比較的シンプルです。

処遇改善加算

しょぐうかいぜんかさん

介護職員の賃金向上のために支給される加算。M&A時の給与引き継ぎにおける最重要チェック項目

介護職員の賃金改善やキャリアパスの整備を行っている事業所に対して、介護報酬を上乗せして支給する制度です。加算区分(I~IVなど)によって支給額が異なり、全額を職員の賃金改善に充てる必要があります。

介護業界でのポイント
M&Aで経営が変わる際、買い手企業と売り手企業で「処遇改善加算の取得状況」や「分配方法(一時金払いか毎月払いか)」が異なると、統合後の給与設計が非常に難しくなります。 もしM&Aによってスタッフの手取り額が下がれば、大量離職につながるリスクがあります。そのため、M&A検討段階(デューデリジェンス時)から、「買収後も同等の処遇を維持できるか」をシミュレーションすることが極めて重要です。

親族内承継

しんぞくないしょうけい

社長の座を息子・娘・配偶者など家族に引き継ぐ、最も伝統的な事業承継の形

現オーナー経営者が、子供や配偶者などの親族(家族)に会社の経営権と株式を承継する方法です。日本の中小企業における事業承継の伝統的な形ですが、後継者候補が「継ぐ意思・能力・資金」を持っているかが課題となります。

介護業界でのポイント
かつては介護事業所でも親族内承継が主流でしたが、近年は「介護経営の厳しさ」「後継者の意思がない」「子供に苦労させたくない」という理由からM&A(第三者承継)を選ぶオーナーが増えています。親族内承継を選ぶ場合も事業承継税制の活用には事前準備が必要なため、早めに専門家に相談することが重要です。

事業承継税制

じぎょうしょうけいぜいせい

株式を後継者へ贈与・相続する際の税金(最大100%)を猶予・免除できる国の制度。

中小企業の円滑な事業承継を促すため、後継者が先代から株式を相続・贈与によって取得した場合にかかる相続税・贈与税の納税を猶予(一定要件を満たす限り免除)する制度です。「一般措置」と「特例措置(2027年3月末までに計画提出が必要)」があります。

介護業界でのポイント
親族内承継で株式を渡す場合はこの税制を活用することで多額の税負担を回避できます。一方、M&Aで第三者に売却する場合は売却益に対して所得税・住民税(約20%)が課税されますが、相続税・贈与税は発生しません。どちらが有利かはケースバイケースのため、M&Aと並行して税理士への相談を早めに行うことが重要です。

事業承継・引継ぎ支援センター

じぎょうしょうけい・ひきつぎしえんせんたー

都道府県ごとに設置されている、国が運営する事業承継の無料相談窓口。まず話を聞きたい方の入口として活用できる

中小企業庁が全国の都道府県に設置している、中小企業の事業承継・M&Aを支援する公的機関です。民間のM&A仲介会社と異なり、手数料が原則無料で中立的な立場からM&Aのマッチング支援も行います

介護業界でのポイント
「相談相手がいない」「まず話だけ聞きたい」という段階のオーナーにとって活用しやすい機関です。ただし介護業界の専門知識(許認可・加算・人員基準など)に特化した相談員が常駐しているわけではないため、初期相談や全体像の把握には適していますが、具体的な介護M&Aの交渉・手続きは介護業界に精通した仲介会社と連携することが一般的です。

事業所規模区分

じぎょうしょきぼくぶん

「利用者が多い大きな施設ほど、報酬単価を安くしますよ」というルールのこと

通所介護(デイサービス)において、前年度の平均利用者数に応じて「小規模」「通常規模型」「大規模型(Ⅰ・Ⅱ)」に区分され、規模が大きくなるほど基本報酬単価が低く設定される仕組みです。

介護業界でのポイント
ここには「合併の落とし穴」があります。 例えば、近隣にある2つのデイサービスをM&Aで統合(合併)した結果、利用者数の合計が増えて「大規模型」にランクアップしてしまい、「忙しくなったのに、単価が下がって利益が減った」という事態が起こり得ます。買い手は統合後のシミュレーションが不可欠です。

事業譲渡

じぎょうじょうと

会社そのものではなく、特定の事業(デイサービス部門や訪問介護部門など)や資産を選んで売買する手法

会社全体(株式)を売り買いする「株式譲渡」とは異なり、事業の一部または全部を切り出して譲渡するM&Aの手法です。売り手は不採算部門を切り離したり、現金化したい事業だけを手放すことができます。買い手は必要な資産や人材だけを引き継げるため、簿外債務(隠れ借金)を引き継ぐリスクを遮断できるメリットがあります。

介護業界でのポイント
介護業界のM&Aでは、小規模な法人が多いため、この「事業譲渡」が頻繁に選ばれます。 最大の注意点は、「介護事業所の指定(許認可)は自動的に引き継がれない」という点です。事業譲渡の場合、原則として廃止届と新規指定申請のセットが必要となり、行政手続きが煩雑になる傾向があります。また、スタッフとの雇用契約も一度巻き直し(再契約)となるため、従業員への丁寧な説明が不可欠です。

従業員承継

じゅうぎょういんしょうけい

外部に売るのではなく、信頼できる社内のスタッフに社長の座を譲ること

親族への承継、第三者へのM&Aと並ぶ、事業承継の選択肢の一つ。長年働いてきた役員や管理者に経営権を譲ります。企業文化を引き継ぎやすいメリットがあります。

介護業界でのポイント
介護現場では「現場長(管理者)が実質的な経営をしている」ケースが多く、最も理想的な形に見えます。 しかし最大の壁は「従業員に株式を買い取る資金力がない」ことと、「個人保証を引き継げない(銀行が認めない)」ことです。この資金・保証問題を解決するために、結局は資金力のある第三者(外部企業)へM&Aを行い、その従業員には雇われ社長として残ってもらう、という解決策に着地することがよくあります。

純資産

じゅんしさん/自己資本

会社の「本当の持ち分」。総資産から全ての借金を差し引いた、株主に帰属する財産

貸借対照表(B/S)において、総資産から総負債(借入金・買掛金など全ての負債)を差し引いた残額のことです。「自己資本」とも呼ばれ、会社が解散した場合に株主に分配される理論上の金額を示します。

介護業界でのポイント
修正純資産法や年倍法など、介護事業所の価値評価の出発点となる数字です。決算書上の純資産をそのまま使うのではなく、不動産の含み損益の調整・回収不能な未収金の除外・退職給付引当金不足分の加算などを行った「修正純資産」をベースに価格交渉が進みます。

人員配置基準

じんいんはいちきじゅん

「利用者●人に対してスタッフが●人必要」という法律上のルールのこと。M&Aの価値評価に直結する

介護サービスの種類ごとに定められた、最低限配置しなければならない職員の人数や資格の要件です。これを満たさないと「人員欠如減算(報酬カット)」や「行政処分」の対象となります。

介護業界でのポイント
M&Aにおいて買い手が最も恐れるのが、買収直後のスタッフ退職による「人員基準割れ」です。基準を割ると運営ができなくなるため、事業価値がゼロになりかねません。 そのため、M&Aの交渉では「現在の充足状況」だけでなく「スタッフの勤続年数や意向(辞めそうにないか)」が、財務データ以上に重要な資産価値として評価されます。

総量規制

そうりょうきせい

「もうこの地域には新しい施設を作ってはいけません」という自治体の制限ルール

介護保険事業計画に基づき、自治体が特定のサービス(地域の施設数)が充足していると判断した場合、新規の指定申請を受け付けない(制限する)仕組みのことです。

介護業界でのポイント
M&Aにおいて、総量規制がかかっているエリアの事業所は「プラチナチケット(希少価値)」となります。 なぜなら、ライバル企業が新規参入したくても新しく作れないため、そのエリアに進出するには「既存の事業所を買収するしかない」からです。この規制エリアにあるというだけで、売却価格が相場より高く評価される強力なプラス材料になります。

サービス管理責任者

サビ管/児発管

障害福祉サービスにおいて、絶対に欠かすことのできない「資格を持った現場の要(かなめ)」

「サービス管理責任者(就労支援やグループホーム等)」や「児童発達支援管理責任者(放課後等デイサービス等)」の略称。利用者の個別支援計画を作成する必須配置の職種です。

介護業界でのポイント
障害福祉のM&Aでは、「サビ管(児発管)が辞めるなら、M&Aは白紙にする」と言われるほど、この資格者の去就が案件の命運を握ります。 要件が厳しく採用が極めて難しいため、売り手は「M&A後も彼らが働き続けたいと思える環境(処遇維持や業務負担の軽減)」を、買い手に確約させることが交渉の肝となります。

シナジー効果

相乗効果

「1 + 1 が 2以上になる」こと。買い手がM&Aをする本当の理由

複数の企業が統合することで、単独で事業を行うよりも大きな成果を生み出す効果のこと。「売上シナジー(販路拡大など)」と「コストシナジー(仕入れ共通化など)」があります。

介護業界でのポイント
介護M&Aにおける代表的なシナジーは「採用コストの削減」と「ドミナント展開(近隣エリアでの効率化)」です。 大手グループの傘下に入ることで、ブランド力を活かしてスタッフを採用しやすくなったり、近隣の事業所間でヘルパーや看護師を融通し合えるようになります。売り手は「自社を買うとどんなシナジーがあるか」をアピールできると、売却価格を上げやすくなります。

た行

チェンジオブコントロール

COC条項

「経営者が変わったら、契約を解除できる(または再交渉が必要)」という、契約書上の取り決めのこと

取引先との契約書の中に、「株主や経営権の変更があった場合、相手方は契約を解除できる」あるいは「事前の承諾が必要」と定めた条項のことです。M&Aの障害になることがあります。

介護業界でのポイント
特に注意が必要なのは、「事業所の賃貸借契約」と「送迎車両のリース契約」です。 オーナーが変わることを大家さんやリース会社に事前に伝えて承諾を得ておかないと、最悪の場合、M&A後に「契約解除(退去)」を迫られるリスクがあります。デューデリジェンスの段階で、契約書のこの条項を確認しておく必要があります。

第三者承継

だいさんしゃしょうけい

親族や社内の従業員ではなく、外部の第三者(他社や個人)に事業を引き継ぐこと。いわゆるM&Aのこと

事業承継には「親族内承継」「従業員承継」「第三者承継(M&A)」の3つのパターンがあります。後継者不在の問題解決策として、近年急速に増えているのがこの第三者承継です。

介護業界でのポイント
かつての介護業界では家族に継がせるのが一般的でしたが、少子化や介護経営の厳しさから「子供には継がせたくない」と考えるオーナーが増えています。 第三者承継のメリットは、後継者問題の解決だけでなく、「大手グループの傘下に入ることで、採用力やIT化、処遇改善が進む」という、事業所自体の存続・発展につながる点にあります。

地域密着型サービス

ちいきみっちゃくがたサービス

市区町村が指定・管理する小規模なサービス類型。市外の法人への譲渡が原則不可という、M&A特有の制約がある

介護保険法に基づき、市区町村が指定・監督権限を持つサービス類型です。認知症対応型共同生活介護(グループホーム)・小規模多機能型居宅介護・定期巡回型訪問介護など、住み慣れた地域での生活継続を支援するサービスが含まれます。

介護業界でのポイント
地域密着型サービスは市区町村外の法人への指定(譲渡)が原則として認められていません。そのため「A市のグループホームをB市の会社が買収したい」という場合、行政の特別な許可が必要となりM&Aのハードルが上がります。その分、地域内での競合参入も制限されているため「地域内での事業者間M&A」では希少価値が高まります。

中小M&Aガイドライン

ちゅうしょうエムアンドエーガイドライン

国が定めた、M&A仲介業者が守るべきルールと中小企業オーナーが知っておくべき知識をまとめた公式指針

2020年に中小企業庁が策定した、中小M&Aの適正化・普及を目的としたガイドラインです。M&A専門業者が遵守すべき行動規範(手数料の明示・情報管理など)と、売り手・買い手が知っておくべき基本知識が網羅されています。2023年には改訂版が公表されました。

介護業界でのポイント
このガイドラインに基づき仲介会社を「M&A支援機関」として登録する制度も整備されています。信頼できる仲介会社を選ぶ目安として「M&A支援機関に登録されているか」「ガイドラインに準拠した契約書・手数料体系か」を確認することが重要です。特に最低報酬額や利益相反(双方代理)についての説明が明確かどうかは必ず確認してください。

定款

ていかん

会社のルールブック。株式の譲渡制限やチェンジオブコントロールに関する規定がここに書かれている

会社の目的・組織・運営に関する基本的なルールを定めた文書で、会社設立時に作成します。株式の発行・譲渡に関するルール、役員の選任方法なども記載されており、法的な最高規範となります。

介護業界でのポイント
中小企業の定款には「株式の譲渡には取締役会(または株主総会)の承認が必要」という「株式譲渡制限」が定められているケースがほとんどです。これ自体はM&Aの障害にはなりませんが、承認決議の手続きが必要となります。また定款の「事業目的」に実際に行っているサービスが記載されているかも確認が必要で、記載がないと許認可申請時に問題になる場合があります。

特定事業所加算

とくていじぎょうしょかさん

「質の高いサービス・体制」を持つ事業所だけに認められる、高単価なボーナス加算

訪問介護や居宅介護支援などで、人材育成や重度者対応など厳しい要件を満たした事業所が算定できる加算です。取得区分により、売上が10%〜20%近く変わります。

介護業界でのポイント
この加算を取っている事業所は、収益性が高いため高値で売れやすいですが、「M&A後も維持できるか」が最大の争点になります。 例えば、「ベテランのサービス提供責任者が辞めずに残ってくれるか」「研修体制を引き継げるか」などが崩れると、買収後に加算が剥奪され、想定していた利益が出なくなる(減収)リスクがあるためです。

特別養護老人ホーム

とくようごろうじんほーむ/とくよう

重度の要介護者が入居する公的な施設。ほぼ全てが社会福祉法人の運営のため、M&Aは特別な手続きが必要

常時介護が必要な要介護3以上の高齢者が入居する公的な介護施設です。正式名称は「介護老人福祉施設」。原則として社会福祉法人のみが開設でき、入居費用が比較的低廉なため常に待機者が多く安定した稼働率が見込めます。

介護業界でのポイント
特養は社会福祉法人が運営するため株式が存在せず通常の株式譲渡はできません。実質的な経営権の移行には理事長・理事の入れ替えという特殊な手続きが必要で、行政(都道府県)の関与も大きくなります。M&Aのプロセスが株式会社より複雑で時間もかかりますが、安定した稼働率と公的ブランドを持つ施設として大手法人にとって戦略的に重要な買収対象となっています。

トップ面談

とっぷめんだん

売り手と買い手の経営者が初めて顔を合わせる直接交渉の場。M&Aの成否を左右する重要な場面

ノンネームシートやIM(企業概要書)を通じて買い手候補が絞り込まれた後、売り手・買い手双方の代表者(社長同士)が直接面会し、事業内容や売却・買収の意図・条件について話し合う場です。この段階で初めて相手の「顔」と「熱意」が見え、基本合意書締結へと進むか否かが決まります。

介護業界でのポイント
介護事業所のM&Aでは「価格」だけでなく「買い手が介護事業の理念や現場を理解しているか」が重要な判断軸になります。売り手は「価格」「雇用維持の方針」「介護事業への理解度」「引き継ぎ後の運営方針」を事前に確認事項としてリストアップしておくことで、後悔のない選択ができます。

独占交渉権

どくせんこうしょうけん

「一定期間、あなた(特定の買い手)としか交渉しません」という約束

基本合意書(LOI)の中で定められる権利です。買い手は、これから時間とお金をかけてデューデリジェンス(詳細調査)を行うため、「調査中に他の人に横取りされたくない」という理由でこの権利を求めます。

介護業界でのポイント
売り手にとっては「もっと好条件の買い手が現れても、交渉できない」というデメリット(拘束)が生じます。 そのため、基本合意書を結ぶ前に、相手の「資金力」や「介護事業に対する姿勢」をしっかり確認し、「この相手なら、他の話を断ってでも交渉を進める価値がある」と確信してからサインすることが重要です。

DCF法

ディーシーエフほう/ディスカウントキャッシュフロー法

「将来稼ぐお金を現在の価値に換算して会社の値段を出す」評価手法。大企業のM&Aで多く使われる

Discounted Cash Flow法の略。将来のフリーキャッシュフロー(事業が生み出す現金)を予測し、適切な割引率で現在価値に換算して企業価値を算出する手法です。将来の成長性を価格に反映できる反面、予測の前提次第で結果が大きく変わる特徴があります。

介護業界でのポイント
DCF法は大企業や成長性の高い企業の評価に適していますが、中小規模の介護事業所のM&Aでは「将来収益の予測が難しく、前提の恣意性が高くなる」ため、実務では年倍法や修正純資産法の方が多く使われます。ただし買い手が大手企業の場合はDCF法でも価値検証することがあるため、売り手も概念として理解しておく価値があります。

デューディリジェンス

買収監査/DD

買い手が売り手の企業内容を詳しく調査すること。「買収監査」とも呼ばれる

M&Aの最終契約を結ぶ前に、買い手側が専門家(会計士や弁護士など)に依頼して行う詳細な調査です。財務面、法務面、ビジネス面などからリスクがないか、提示された価格が適正かをチェックします。

介護業界でのポイント
介護M&Aのデューデリジェンスでは、財務内容だけでなく「運営基準・人員基準を遵守しているか」が厳しくチェックされます。 具体的には、過去の「実地指導(運営指導)での指摘事項」や「未払い残業代の有無」、「事故報告書の管理状況」などが重点項目です。売り手側は、これらの資料を事前に整理し、包み隠さず開示する姿勢が成約への近道となります。

な行

ネームクリア

M&Aの検討が進んだ段階で、匿名だった会社名を買い手候補に明かすこと

最初は企業名を伏せた「ノンネームシート」で検討を進めますが、買い手がさらに詳しい情報の開示を希望し、秘密保持契約(NDA)を結んだ後に、初めて具体的な社名や詳細資料を開示することを指します。

介護業界でのポイント
介護業界は地域ごとの横のつながりが非常に強く、噂が広まりやすい業界です。 ネームクリアの管理が甘いと、正式決定前に「あそこの事業所、売りに出されているらしい」という噂が立ち、スタッフの動揺や退職を招く恐れがあります。そのため、仲介会社を通じて情報の出し先を慎重にコントロールすることが重要です。

年倍法

ねんばいほう

「資産 + 利益の数年分」で会社の値段を決める、中小企業M&Aで最もポピュラーな計算ルール

企業価値評価(バリュエーション)の手法の一つ。 「時価純資産 + (営業利益 × 1〜3年分)」というシンプルな計算式で算出します。複雑な計算式(DCF法など)よりも分かりやすく納得感があるため、小規模M&Aの現場でよく使われます。

介護業界でのポイント
この計算式の「利益の◯年分」にあたる部分が「のれん代(営業権)」です。 介護事業所の場合、単に利益が出ているだけでなく、「稼働率が高い」「地域での評判が良い」「スタッフが長く定着している」といった要素が揃っていると、この年数が「3年分」やそれ以上評価され、売却価格が跳ね上がる傾向にあります。

ノンネームシート

ティーザー

会社名を伏せた状態で作られる、買い手向けの「求人票」のような案件概要書

M&A仲介会社が買い手候補を探す際、最初に提示する資料です。「関東エリア・デイサービス・売上1億円」といった匿名情報(ノンネーム情報)のみが記載され、特定されない範囲で事業の魅力がまとめられています。

介護業界でのポイント
売り手にとってのポイントは、「特定されないギリギリの範囲で、いかに魅力をアピールできるか」です。 単に「売上◯◯万円」と書くだけでなく、「地域No.1の稼働率」「管理者が残留予定」「処遇改善加算Iを取得済み」など、買い手が欲しがるフック(強み)をしっかり記載することで、良質な買い手からの問い合わせを引き寄せることができます。

のれん代

営業権

目に見えないブランド価値や将来の収益力。純資産(資産-負債)に上乗せされる「プラスアルファ」の価格

買収価格と、売り手企業の純資産額との差額のことです。技術力、ブランド力、顧客リスト、ノウハウなどの「無形資産」が価値として評価され、金額に反映されます。

介護業界でのポイント
介護業界における「のれん代」の源泉は、主に以下の3点です。

1. 利用者の安定確保(現在の稼働率や、ケアマネジャーとの信頼関係)
2. スタッフの定着率と資格(管理者やサビ管、有資格者が安定して働いているか)
3. 立地と評判(地域での長年の実績)設備が古くても、これらの「人」と「評判」がしっかりしていれば、高いのれん代が評価される傾向にあります。

は行

フランチャイズ(FC)加盟店

大手チェーンの看板を借りて運営している店舗。勝手に売ることができず、本部の承諾が必要

本部(フランチャイザー)と加盟店(フランチャイジー)が契約を結び、商標の使用権やノウハウの提供を受けるビジネスモデルです。デイサービスや訪問マッサージなどで多く見られます。

介護業界でのポイント
FC加盟店を売却する場合、通常のM&A契約に加えて「FC本部の承諾」が必須となります。 本部によっては、「オーナーが変わるなら一度解約して、新規加盟金を払ってください」と求めてくるケースや、そもそも「譲渡不可」としているケースもあります。M&Aを検討する際は、最初にFC契約書の「譲渡禁止条項」や「違約金」を確認しなければなりません。

ファイナンシャル・アドバイザー

FA/財務アドバイザー

売り手(または買い手)の「専属代理人」として一方の利益だけを追求するM&Aの専門家。仲介会社とは立場が根本的に異なる

M&Aにおいて、売り手または買い手の一方だけと契約しその利益を最大化するために動く専門家のことです。双方と契約して橋渡しを行う「仲介型」とは異なり、FAは片側の立場に立って交渉します。銀行系や独立系のM&A会社がFAとして機能するケースが多いです。

介護業界でのポイント
中小規模の介護M&Aでは仲介型が一般的ですが、仲介会社は売り手・買い手の双方から手数料を受け取るため、厳密には売り手の利益だけを最大化する立場ではありません。取引金額が大きいケースや買い手が上場企業の場合は、売り手側もFAを立てることで交渉力が増し有利な条件を引き出せる可能性が高まります。

秘密保持契約

NDA / CA

「これから見せる情報を、許可なく他人に漏らしません」と約束する契約。M&Aの入り口で必ず結ぶ

Non-Disclosure Agreement(またはConfidentiality Agreement)の略。 M&Aの検討を進めるにあたり、売り手と買い手が相互に内部情報(財務データや顧客情報など)を開示する前に締結します。違反して情報を漏洩させた場合の損害賠償責任などが定められます。

介護業界でのポイント
介護業界において最も守るべき秘密は、技術情報ではなく「M&Aを検討しているという事実そのもの」です。 もし情報管理が甘く、噂レベルで「あそこの事業所、身売りするらしいよ」と広まってしまうと、不安に思ったスタッフの大量退職や、利用者の流出(控え)に直結します。そのため、仲介会社を通じて情報の出し先を厳格にコントロールすることが求められます。

廃業

はいぎょう

事業をやめて会社を閉じること。M&Aと並ぶ選択肢だが、利用者・スタッフ・オーナーへの影響が大きい

事業活動を停止し、会社・事業所を閉鎖することです。自主廃業の場合、資産を売却して負債を返済し、残余財産を株主に分配する「清算手続き」を経て法人格が消滅します。

介護業界でのポイント
廃業では「のれん代(無形の価値)はゼロ」になりますが、M&Aであればそれが現金化できます。また介護事業所の廃業では、行政から利用者の転居先(受け皿)の確保を求められるケースも多く、精神的・時間的な負担は大きいです。後継者不在だからといって即廃業を選ぶ前に、M&Aの可能性を探ることが、利用者・スタッフ・オーナー全員にとって望ましい解決策となることが多いです。

廃止届

はいしとどけ

事業譲渡のM&Aで売り手が行政に提出する「この事業所を閉じます」という届出。指定申請とセットで使われる

介護・障害福祉事業所の指定を返上する際に指定権者(都道府県・市区町村)に提出する行政手続きです。事業譲渡によるM&Aでは売り手がいったん廃止届を提出し、買い手が新たに指定申請を行うことで事業所の経営権が移転します。

介護業界でのポイント
廃止届の提出タイミングは、クロージングのスケジュール管理において最も神経を使う部分です。廃止届と指定申請の手続きが噛み合わないと「買い手の指定が下りる前に売り手の指定が切れる」という空白期間が発生し、その間は介護報酬を請求できません。指定申請の受付締切・審査期間・指定開始日を逆算して廃止届の提出日を綿密に設定することが、仲介会社の腕の見せ所となります。

表明保証

ひょうめいほしょう

売り手が買い手に対し、「決算書や説明内容に嘘や隠し事はありません」と契約書で約束すること

最終契約書(DA)において、売り手が財務内容、法務状況、資産の実在性などが「真実かつ正確である」と保証する条項です。もし売却後に嘘が発覚した場合(表明保証違反)、買い手は損害賠償を請求できます。

介護業界でのポイント
介護業界では、特に以下の点について表明保証を求められることが一般的です。
「過去に未払いの残業代がないこと」
「実地指導(運営指導)で重大な指摘を受けていない、または改善済みであること」
「指定取り消しの事由に該当する行為がないこと」

これらは簿外債務(帳簿に載らない借金)になり得るため、売り手はこれらを正直に開示(ディスクローズ)した上で契約する必要があります。

返戻

へんれい

請求ミスや記載不備などで国保連から介護報酬の請求が「受け付けられず戻ってくる」こと

介護給付費の請求(レセプト)において、記載内容の誤りや資格要件の不備などにより、国民健康保険団体連合会(国保連)から請求が差し戻されることです。返戻された請求は修正の上で再請求する必要があり、入金が遅れます。「過誤」(誤って支払われた後に取り消す手続き)とは異なります。

介護業界でのポイント
デューデリジェンスで返戻の発生頻度が高い事業所は、「請求管理・記録管理が不十分なリスクがある」と評価されます。また返戻が多い月は入金が遅れるため資金繰りが不安定になります。売り手は過去の返戻率と原因・改善状況を整理して開示できるようにしておくと買い手の不安を払拭することができます。

放課後等デイサービス

ほうかごとうデイサービス/放デイ

障害のある子供が学校の放課後や長期休暇に通う療育・支援サービス。近年M&A案件が急増している

学校就学中の障害児(6〜18歳)が放課後や学校の長期休業日に通所する支援サービスです。療育・生活能力向上・居場所の提供などを目的とし、利用ニーズが高く事業所数も急増しています。児童福祉法に基づいています。

介護業界でのポイント
放課後等デイサービスでは「児童発達支援管理責任者(児発管)」の去就が最大の鍵となります(障害福祉のサビ管と同様)。また許認可手続きや加算体系が介護保険サービスと異なるため、介護専門の仲介会社ではなく児童福祉・障害福祉にも精通した専門家への依頼が望ましいです。近年は報酬改定によって収益性が低下した事業所も多く、財務内容のデューデリジェンスを特に丁寧に行う必要があります。

簿外債務

ぼがいさいむ

決算書(貸借対照表)には載っていないが、将来支払うことになるかもしれない「隠れた借金」

帳簿上は認識されていない負債のことです。未払いの残業代、退職給付引当金の不足分、訴訟リスクによる賠償金などが該当します。M&A後にこれらが発覚するとトラブルの原因となります。

介護業界でのポイント
介護業界で頻出する簿外債務は、「スタッフへの未払い残業代(サービス残業)」と「社会保険の加入漏れ(パート職員など)」です。 これらは労務管理が甘い事業所では多額に上るケースがあり、買い手は買収価格からこのリスク分を差し引こうとします。売り手は隠さずに開示し、価格交渉の中で清算方法を話し合う誠実さが求められます。

PMI

ピーエムアイ/統合プロセス

M&Aが成立した後に行う、経営や業務の「統合・引き継ぎ」作業のこと。M&Aの成功はこれで決まる

Post Merger Integrationの略。 成約後に、異なる企業文化を持つ2社が、経営理念、業務フロー、システム、人事制度などを統合していくプロセスのことです。この期間のマネジメントに失敗すると、期待したシナジー効果が得られません。

介護業界でのポイント
介護現場におけるPMIの最大の壁は、「介護記録ソフトやレセプトソフト(請求ソフト)の移行」と「給与体系の変更」です。 使い慣れたソフトが変わる負担や、手当のルールが変わる不安は、スタッフの離職に直結します。そのため、成約前の段階から「いつ、どのような説明会を開くか」「システム移行の研修はどうするか」というPMI計画を具体的に練っておく必要があります。

ファクタリング

介護報酬ファクタリング

請求済みの介護報酬(売掛金)を、入金日より早く現金化する資金調達サービス

国保連からの介護報酬入金(通常サービス提供の2ヶ月後)を待たずに、ファクタリング会社に債権を譲渡し、手数料を引いた現金を早期に受け取る仕組みです。

介護業界でのポイント
M&Aの審査において、売り手企業がファクタリングを恒常的に利用している場合、「キャッシュフローが自転車操業状態である」と判断される材料になります。 買い手からすると、「買収直後に運転資金を追加投入しなければならないのか?」という懸念材料になるため、利用している場合は「なぜ利用しているか(一時的なのか、慢性的なのか)」を明確に説明する必要があります。

ま行

マルチプル

ばいりつほう

「同業他社と比べて何倍の価値か」で会社の値段を決める評価手法。EBITDAと掛け合わせて使う

類似する上場企業や取引事例の財務指標に対する企業価値の倍率(マルチプル)を参考に、対象企業の価値を算出する手法です。「EV/EBITDAマルチプル」が代表的で、同業の倍率が「5倍」であれば自社のEBITDAに5を掛けて企業価値を算出します。

介護業界でのポイント
介護業界のマルチプルはサービス種別と収益の安定性によって異なります。稼働率が高く安定した収益基盤がある事業所はマルチプルが高く評価され、不安定な事業所は低くなります。年倍法の「利益の◯年分」という考え方はマルチプルと本質的に同じであり、複数の評価手法を用いて相互に確認することで、より説得力のある価格交渉ができます。

や行

有利子負債

ゆうりしふさい

利息を払って借りているお金の合計。企業価値から株式価値(手取り額)を算出する際に差し引かれる重要な数字

銀行からの借入金(短期・長期)・社債など、利息の支払いが伴う負債の総称です。買掛金や未払金などの「無利子の負債」とは区別されます。企業価値(EV)から有利子負債を差し引くことで、株主に帰属する「株式価値」が算出されます。

介護業界でのポイント
設備投資のために借入を重ねてきた事業所は企業価値が高くても有利子負債の分だけ株式価値(手取り額)が減ります。M&Aを検討し始めたら可能な範囲で借入を返済しておくことが売却価格の最大化につながります。また、経営者保証(個人保証)がついている借入はM&A時に解除できるかどうかも重要な交渉ポイントです。

有料老人ホーム

ゆうりょうろうじんほーむ/とくていしせつ

入居一時金などの自費負担がある民間の老人ホーム。不動産価値が絡むためM&Aの評価が他の介護事業所と異なる

入居者に食事・介護・生活援助などを提供する民間施設です。介護保険の「特定施設入居者生活介護」の指定を取得している場合は介護報酬も受け取れます。入居一時金や月額利用料が高額なものから低額なものまで幅広く存在します。

介護業界でのポイント
有料老人ホームのM&Aでは、建物の賃借・所有状況(不動産価値)が評価に大きく影響します。自社所有の建物であれば不動産の含み損益も企業価値に加味され評価が複雑になります。また入居者から受け取っている「入居一時金」の返還義務についてもM&Aで引き継ぐかどうかの精算が必要で、この処理が甘いとM&A後に思わぬ返還負担が発生するリスクがあります。

ら行

レーマン方式

M&A仲介会社に支払う「成功報酬」の一般的な計算ルールのこと。取引金額が大きいほど手数料率が低くなる仕組み

取引金額に応じて、以下の料率を掛けて算出する計算式のことです。(伝統的なレーマン方式の例)
1億円以下の部分:5%
1億円超〜2億円以下の部分:4%
2億円超〜3億円以下の部分:3%
3億円超〜4億円以下の部分:2%
4億円超の部分:1%
(以下、金額が上がるごとに料率が下がる)

ただし、実際には多くの仲介会社が独自の「修正版レーマン方式」を採用しており、料率の区分が異なることがあります。また、多くの仲介会社ではこれとは別に「最低報酬額(例:100万円〜2000万円)」を設定しています。

介護業界でのポイント
介護業界のM&Aは取引規模が数千万〜数億円程度の中小規模案件が中心です。そのため、レーマン方式の計算結果よりも「最低報酬額」がいくらに設定されているかが、手元に残るお金に大きく影響します。 また、計算の基準となる金額が「株式の価格(譲渡対価)」なのか「負債を含めた総資産(移動総資産)」なのかによって手数料が倍近く変わることもあるため、契約前に確認が必要です。

ロックアップ

会社を売った後も、一定期間は社長や管理者がそのまま会社に残って経営を手伝う義務のこと

M&A成立直後の経営混乱を防ぐため、売り手の元オーナー(経営者)が、一定期間(数ヶ月〜数年)、役員や顧問として会社に留まることを契約で義務付ける条項です。

介護業界でのポイント
介護・福祉事業所では、オーナー社長自身が「管理者」や「サビ管(サービス管理責任者)」を兼務しているケースが多く、オーナーが抜けると運営基準を満たせなくなる(運営できない)リスクがあります。 また、利用者さんやスタッフとの信頼関係の引き継ぎも繊細なため、M&A後半年〜1年程度は「顧問」として残り、徐々に権限を移譲していく「並走期間」を設けるケースが多く見られます。

レセプト

介護給付費明細書

毎月10日までに国保連(国民健康保険団体連合会)へ送る「請求書」。事業所の売上の証拠となる最重要データ

事業者が国民健康保険団体連合会(国保連)に対して、介護報酬を請求するために作成する明細データのことです。

介護業界でのポイント
デューデリジェンス(買収監査)において、レセプトデータは「事業所の健康診断書」のような役割を果たします。 「加算を正しく算定できているか」「返戻(請求ミスによる差し戻し)が多くないか」「ケアプラン通りにサービス提供されているか」などが全て記録されています。買い手はこのデータを見て、「管理体制がずさんな事業所ではないか」をジャッジします。

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